読む。
一冊の本がある。
少し小麦色だが、まだ色あせてはいない。
きっと新しい本だ。
開いてみると、そこにはまだ文字がなかった。
もしかしたら、ないのではなくて、
文字が追いついていないのかもしれない。
僕は、そう感じた。
明確に空白ではないが、
文字のない1ページ1ページを、
無性に読みたくなった。
定型化された記号のそれとは明らかに異なり、
その1ページ1ページは、雰囲気を物語る。
どうやら文字を置き去りにして、物語は始まっているようだ。
でも、まだ僕は物語を言葉にできない。
その雰囲気の連続は、一つのシーンのように読めてきた。
素足の少女が駆けだしたような。
何に向かっているんだろう。
きっと数多くの大切なものの一つにちがいない。
今日はもったいないが、本を閉じよう。いや、閉じられた。(笑)
その雰囲気を、僕の心の中に留めるために。
その雰囲気を、本が文字にするために。
明日はちゃんと読んであげられるだろうか。
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次の日、また本を手に取った。
とても清々しい。
その本の1ページ1ページを読もうとする僕の心は、
今までにない明るさと朗らかさを纏っている。
でも、何かわからない。
たまに、僕の都合のいいように読みたくもなってしまう。
都合のいいようにページをめくりたくもなってしまう。
その本が求めていることは、きっと違うことなのに。
まずは、
この本を、僕のためにではなく「大切」にしよう。
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