難しい本の読み方【百年読書講座に向けて】
これは、百年読書講座に向けたものです。
目次
Ⅰ、はじめに
Ⅱ、本の読み方
Ⅲ、本との向き合い方
Ⅳ、さいごに
Ⅰ、はじめに
これから、塾生に本を読ませるに当たって、
本の読み方を簡単にまとめます。
まず、本には、大きく二つのカテゴリーがあります。
感じるための本(絵本や小説)と、
理解するための本(哲学書や科学系の専門書)です。
前者は、どのように読んでも構いません。
感じればいいのです。
後者は、一つ一つを理解していかないといけません。
もっと言うなら、理解しないと、あるいは理解しようという姿勢がないと、
読む意味がありません。
この記事では、後者の本を取り扱います。
前者と違って、技術が必要とされるからです。
また独特な姿勢も必要とされます。
教養としての叡智を、
適切に、効率良く身につけられるよう、
簡単にまとめます。
Ⅱ、本の読み方
さて、ここで書く本の読み方は、
理解するための本(哲学書や科学系の専門書)の読み方です。
そのような本を読むための技術と言っていいかもしれません。
その技術を、「初めて哲学書や専門書に向き合う人」のためにまとめます。
大きな流れは、
⑴ 何について書かれているか知る
⑵ 本の全体を把握する
⑶ 章、節、項を意識する
⑷ 諦める
⑴ 何について書かれているか知る
最初のステップは、これから読む本を知ることです。
哲学なのか、歴史学なのか、社会学なのか、数学なのか、化学なのか、
哲学なら、いつの誰が、どんな社会的背景で書いたのか、
哲学の中でも、形而上学か、存在論か、認識論か、経験論か、観念論か、現象学か、
知っておく必要があります。
これは、自分がこれから何について考えるのか把握しておくためです。
あるいは、何のために読むのか、自覚するための作業とも言えます。。
また、いくつもの本を読んでいく中で、読んだ本の内容を比較し、関連付けていくことにも、これは役立ちます。
⑵ 本の全体を把握する
次のステップは、全体を把握することです。
全体を把握するためにはいくつかの方法があります。
・目次を読む
・最初と最後を読む
・通読する
の三つです。
ただ、目次を読むことで、全体を把握するためには、今から向き合う本の分野をある程度読みこなしていないと、予測が立ちません。
また、通読(最初から最後までざっと読むこと)も、
かなりの読書量をこなし、読む力がないと難しいです。
初心者向けに書いているこの記事の趣旨からすれば、オススメは、
最初と最後を読む、ですね。
文章の構造は、
序論 本論 結論
起 承 転 結
起 結 承 承 結
が、大半です。
小学校や中学校で習いますよね。
最初の
「これから何について書きますよ」と
最後の
「つまり、こういうことなんです」を、
まず知っておく。
そうすると、この本が言いたいことを知った上で、
説明をしてもらう形を作れます。
何を言いたいかわからないまま読み続けるのとでは、
理解の深さも速さも大きく変わります。
著者にもよりますが、
だいたいの本にある「はじめに」を、
しっかり理解するまで読むのもオススメです。
なぜなら、執筆の行程として、「はじめに」は、
ほとんどの場合、最後に書くからです。
読みやすい本は、「はじめに」に、本の全体、言いたことが、ダイジェストで書かれています。
こうやって、何を言わんとしているかをぼんやり把握します。
⑶ 章、節、項を意識する
誰が何について書いていて、
どのような結論なのか、ある程度把握したら、
やっと中身を読んでいきます。
文章のパーツには、章、節、項があり、
そのそれぞれに、起承転結があります。
まずは、これを意識することです。
読み進めているうちにわからなくなれば、
その章や、節の、「起」と「結」を読んでみることも、一つの方法です。
より理解を深めたければ、段落ごとに「題名」を付けていくこともオススメです。
その段落が言いたいことを一言で表すという作業は、深い理解を手助けしてくれます。
⑷ 諦める
いくら効率よく読み進めても、わからないものはわかりません。
学校の国語の授業で用意される長文は、かならずその文章の中に答えがありますが、
こういった類の本は、そうとは限りません。
著者によっては、知ってて当たり前でしょと、かなり高度な思考の結果をポンと出してきたり、そもそも理解してもらおうと思わずに書いていたりします。
一つの段落に二つ以上わからない言葉があったら、
おそらくその段落は、理解できません。
そのような理解できない段落が、一つの項にいくつもあれば、
その項は、理解できません。
節も章も同じです。わからない節がたくさんあれば、章を理解できません。
そうすると、その本が自体が理解できないことになります。
そんな時は、諦めてください。
仕方ないのです。
理解できない理由は、ほとんどの場合、
語彙力と、学術史上のコンテクスト(文脈、つながり)の二つになります。
語彙力が理由で読めない場合は、調べれば済みます。
ただ、学史的なコンテクストが原因の場合、
つまり、向き合う本に登場するたくさんの前提を、理解していない場合は、
その分野の本を遡って読む必要があります。
例えば哲学だと、
よほどの天才でない限り、ソクラテスまで遡る必要があるでしょう。
基本的に、いきなりニーチェを読むとか、ハイデガーを読むのは不可能です。
Ⅲ、本との向き合い方
ここまで読み方、つまりは理解の仕方について書いてきました。
ですが、書いてあることを、ウンウンと、鵜呑みにしていけばいいということでもありません。それで得られる理解は、おそらく自分のものとして活用することはできませんので。
そこで、この章では、本との向き合い方を説明します。
もちろん、ここでも本というのは、哲学書や科学系の専門書を指します。
このような本との向き合い方でポイントとなるのが、
疑って読む
ということ、ただ一点です。
書いてあることが正しいのか、
矛盾点はないか、
これを探しながら読むことで、
論理的に捉えることが追求されるし、
そのような力が養われます。
本来このような分析点検的な姿勢や、
それに関する言及を、「批判」と言います。
否定や誹謗中傷と、同義とされがちですが、全く別物になるんですね。
重要なのは、何事も書いてあることを鵜呑みにしないことです。
疑わないと、本を読んだだけの、ただのバカになります。
理由は簡単。
本を読むとたくさんの知識が頭に入ります。
これはいいことかもしれませんが、
疑わずに読む人は、そのこと(頭に入ってきた知識)に関して、考えることをやめてしまうのです。
結果、自分で考えることのできない人間に成ってしまいます。
Ⅳ、おわりに
このように、全体を把握しながら、はじめと終わりを意識し、
読み進めれば、だいたいの本は理解することができます。
ただ、本を読むことで、何かが完結することは決してないことを忘れずに、
本と向き合いましょう。
本で得られる知識は、あくまで、これからの思考の材料にすぎません。
得た知識を組み立て、前へ進め、自分のものとする必要があります。
それが、時間軸上、現在という現実的に最も未来にいる私たちがやるべき作業なのです。
補足
トレーニングの方法
文章の要約を重ねるのが一番。
要約の方法がわからなくなったときは、
「友達に説明するならどう話すか?」という視点でやってみましょう。